カナブンのダイビング



遠出すると毎度 ウィルスに出くわす。今回も高々500キロの移動の終わりに ウィルスに占領された身体は言うことを聞かず、いまベッドの上でこれを書いている。

旅先でウィルスと出くわす確率は昨年1年をとってみれば 100パーセントを誇る。3月にミシガンに行った時にはミシガン行きに乗り継ぐデンバーの空港で既に割高の薬を購入していた。東京 - デンバー間の機内でウィルスと交わったらしい。黄色くて小さいカナブンくらいのサイズの錠剤を旅の始まりから飲み始めた。朝、胃の中にダイブしたカナブンが胃酸で溶け、昼に新しいカナブンが胃の中にダイブする。そういう連鎖を繰り返す。結局は24匹のカナブンが胃酸に溶けた。

初夏、昼下がりからイギリスの友人とふざけた飲み歩きをした。最後には霞がかった朝の青白さが暗闇にうっすらと滲んでいくのを横目に見つつダウンした。二度、セキュリティが帰れと店の外に出したが、友人はそれを面白がって何度も面倒見よく僕を立たせた。僕の脳は楽しんでいたけど、身体はその後24時間ダウンしたままだった。友人は「お前はもっとタフだった。」と残念がった。

2018年の目標を一つあげるなら 「風邪をひかない」だと思う。なんと弱々しく意識の低い目標か。だけど風邪さえ引かなければ今年は万事快調にやって行ける気がする。タフでいきたい。他のことは目標にしなくても身体が勝手に向かっていくだろう。きっと今年は良い年になる。作品を見てくれている人たちが増えている。新しい作品も少しずつ出来てきている。作りたいものが作れてきている。そしてまだまだ作れるという光がある。

大きな到達点がある。この2、3年でその作品を作りたい。それが出来上がったら、気分の不安定は少しマシになると思う。

僕の身体と僕の作品以外のことについては考えたところで仕方がない。高速道路を猛スピードで走る大群にはついて行けない。まぁいいさ、地につく足を確かめながら歩いていくさ。

去年の漢字は「北」だったらしい。僕は昔から東西南北の位置関係や右左の区別が覚えられなくて、いちいち日本地図を思い出して北海道を上にして東京は東、大阪は西、サザンは夏、西部劇はウェスタン、という風に辿っていかないと把握できない。太陽は西から昇るか東から昇るか、東からだったと思うが、そう見せかけて西からだったかもしれない。どの記憶が正しくアップデートされたものかわからない。あれはこちらに向かってるのか遠ざかってるのか。時計の短針と長針の関係性から時刻は割り出せない。左右は「手を握れ」と脳が命令した時に無意識に動く方が利き手の右、反対が左。「右折」なんて言われるともうわからない。「う」が何か考えないといけないし、その上で「みぎ」がどちらか考えないといけない。何度となく覚えようとしたが、そう言うことは一向に感覚に入ってこない。頭の中がムズムズして気分が悪くなる。

今年はどんな一年になるか。出来れば大きなことは起きず、去年の1ヶ月分くらいのスピードと情報量でやりくりしてほしい。でもそうはいかないだろう。時間を止めて作品を作りたい。何かが動いていると嫌でも急き立てられる。大気汚染で深刻なデリーのマラソン大会が結局開催されたのか次の日以降のニュースでは見ていない。

今日も午後に差し掛かる。またカナブンが一匹 ダイブして胃湖に波紋ができる。波紋は大きく広がりながら ゆっくり消えていく。

あけましておめでとう。









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