スペイン記 (9) エリック・ドゥルゲは笑う。


<エリック・ドゥルゲは笑う。>





エリック・ドゥルゲは慌てない。

バスの時間が刻一刻とせまってくる。
それでもエリック・ドゥルゲは慌てない。







2時20分頃、"BROWN SUGER" に着いて、
サンドウィッチを注文して店主のおっちゃんに「今日のバスで次の街に行くんだ」って言う。いつも10分くらいでサンドウィッチを作ってくれるのに、今日はパンがないとか何とか言って30分もかけてサンドウィッチを作る。あんまり急がしてもなぁとか思ってぼーっとドゥルゲさんと話していた。2時54分、サンドウィッチが目の前に到着する。バクバクとかぶりつく。オリーブオイルとチーズとツナとトマト。美味しい。でも時間がない。。。







僕はいそいで食べて、お礼を言ってバス停へ駆けて行った。


しかしバスはジャスト今行っちゃいましたよ系で、バス停のおばさんに「もう今日のバスはないわー、明日やね。」と言われる。ぬおおおおーっと叫びたくなる気分。別に間に合わなかったわけではなく、サンドウィッチを待っていたが為にバスを見逃してしまって、はらはらと崩れ落ちそうになった。

今日どうしてもコノ町を出たい。僕は一度そう思うと理由も無く無性にそうしなければ気がすまなくなる。別にいそぐ用事もないけど、今日、どうしても次の町に行きたい。ヒッチハイクかタクシーで行くのか、あれこれ考えて決めた。

とりあえず "BROWN SUGER" に戻ろう。疲れた。


"BROWN SUGER"に戻ると店の前の椅子にエリック・ドゥルゲが居た。
バスに乗り遅れた瞬間、「あいつのせいやあああ」って憎悪と言っても過言でない感情を抱いていたのに、「どうしたんや〜?」
って聞かれて「バス乗り遅れたんやー!!」って言うたら
「そうかーそうかーまぁあと一日ゆっくりしていきぃや」
って言われるとなぜか色んな気持ちが すーっと消えて行った。






そうだな。明日で良いや。いそぐ必要はないんだな。




エリック・ドゥルゲは笑った。







<カダケスの砂浜でお昼寝>





やることもないので "BROWN SUGER" に戻って、店主のおっちゃんと喋る。






おっちゃんに「今日泊まるところなかったら俺ん家、泊まって行けばいい」と言ってもらって何か安心する。



それで何もやる気もしないし、眠くなってきたので太陽がご機嫌に照っている砂浜で寝っころがって昼寝することにした。周りの人も思い思いに太陽を楽しんでいたので例にならって 上半身ハダカんなってリュックを枕にして大の字になって、酔っぱらいのおっさんスタイルで眠ることにした。それから2時間たっぷり眠る。


その後、エリック・ドゥルゲと中年女性と中年男性がカフェで話していたから一緒になって話していたけど、あんまり面白くなくなってきたから散髪でもしよかなって思って、床屋を捜す。見つからないので諦めて、またドゥルゲと喋ってまったりする。




もう僕はカダケスに心はなかった。心だけが次の町に先に輸送されてて身体だけが輸送出来ずに待機していた。今日はゆっくりしようと決めていてもやっぱり「今日、この町を出なければ行けない」という思いは底の方にはあった。まぁでも考えるのは嫌いなので、スケッチしようと決める。スケッチさえしていたら心も落ち着くし、今日バスを逃した” 意味 ” が見いだせる。


僕はドゥルゲとお別れをして、カダケスの街が見渡せる場所を探した。岸に乗り出したボートから対岸にカダケスを見渡す良い場所を見つけたのでボートの中に腰を下ろして、ゆっくりと水彩絵の具とペンを取り出して、スケッチを始めた。スケッチ坊主の写真を撮ったり、後ろで眺めてる人がいた。



2時間かけて、ゆっくりスケッチをする。太陽はもう頭のさきっちょしか見えていない。







9時、”BROWN SUGER” に戻る。店には既に5人くらい客がいた。店主のおっちゃんが「SHUN !」と出迎えてくれて僕はサンドウィッチとビールを注文する。今回のサンドウィッチはチーズとアボカド、トマト、ピーナッツバターにハチミツ。案外さっぱりしていて、これも美味。それからよくわからない果物のジュースを飲む。



店先では、バルの客のおじさんとエリック・ドゥルゲが口論をしていた。おじさんにどうしたのかと尋ねたら、「エリックはいつも歴史歴史だ。あいつは今を生きていないんだ。」と言った。脈絡もなく、いきなりそんなん言われてもようわからんわ〜と思った。ただ何となくテント暮らしで歴史好きのエリック・ドゥルゲの方が良い人だと決めつけた。でも180センチくらいあるエリック・ドゥルゲが小柄に見えて、切なくなった。





そのあとエリック・ドゥルゲと少し話をして、お別れを言った。またカダケスに行ったら会えるのかもしれないな。エリック・ドゥルゲは夏には観光客がうじょうじょで大変大変。冬は海からくる寒さで雪が降って大変大変。だからまた今と同じ季節に来なよ、と言った。僕はまた同じ季節に来たいなぁと思った。





それから店主のおっちゃんの家に店主の子分?と一緒に行く。おっちゃんの家は地下ガレージを改造したアジトみたいだった。そこのソファで爆睡した。







<エリック・ドゥルゲとの別れ、カダケスとの別れ>


朝起きて支度をして家を出る。子分はまだベッドで寝ていたけど、店主も店主の奥さんも家にはいなかった。途中のカフェで 店主の奥さんがいたので、挨拶をして住所を聞いた。あとで手紙を送ろうと思った。


それから BROWN SUGER に行って店主のおっちゃんにお礼とじゃあねを言いに行く。ドゥルゲさんはいなかったのが残念だったので、店主のおっちゃんにドゥルゲさんにも宜しくと言って店を出る。カダケスを出る。




次の街フラガは、まずバスでフィゲラスに戻り、そこから電車に乗りかえて一時間ほど走ったところ。10時、バスに乗り込む。熟睡の中、バスはフィゲラスに到着する。電車に乗り換えて次の街へと進みだす。車内で無性にアジカンの「次の街まで」が聴きたくなる。i POD で曲を探すと「次の街まで」ではなく「君の街まで」だった。


フラガに降り立つ。あいにくの雨模様。ダリとガラのお城へと歩き出す。

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