スペイン記 (8) エリック・ドゥルゲ、旅に出る。










































< エリック・ドゥルゲの来襲 >


カダケスのカフェでの穏やかな朝、僕がチョコドーナツをほおばりながら明けてくる朝の空を眺めていると、奴はハットをかぶってやってきた。


僕の前にはいつのまにか奴は座ってコーヒーを飲んでいる。



時計を見ると7時12分。僕の穏やかな朝は10分も経たぬうちに消え去ってしまった。



それでもハットの奴を見ると、自然と安心する。




「おはよう、よく眠れたかい?」

「まぁまぁかな。寒過ぎたよ」

「山の方で眠れば風は避けれるけどな。今日はそうしたらいい。」

「いや今日とまるなら、どっか宿を探すよ」

「今日は何をするんだい?」

「ダリの家にいくよ。」

「ダリの家かー、じゃあ今から行くか!」

「まだ7時やで、今から行っても開いてないやろ」

「わからんでぇ、早く行ったにこしたことはない。ダリの家はこっから一時間はかかるからなぁ。」

「それでも8時やで。早すぎる早すぎる」

「まぁとりあえず店変えようや。あっちの店のコーヒーが飲みたいんや。」

「今から?もうちょっとゆっくりしていこうや。」

「あっちの店でゆっくりしたらええがな〜」

「まだ寒いやん」

「いっつおーけー」





穏やかな朝はするりと僕から遠のいて行く。


出会う。見つかる。見つけられる。


この町の小ささを改めて感じる。











< エリック・ドゥルゲ、旅に出る。 >


いくらなんでも8時は早すぎる。



とりあえず時間をつぶさせなければ。




「ポストオフィスに行きたい。」



僕がそう言えば親切なドゥルゲさんは僕をポストオフィスに連れて行ってくれる。ここで手紙を書こう。ドゥルゲさんはカフェでコーヒーを飲んで待ってると言っている。よし、ゆっくりと丁寧に書こう。フィゲラスで買ったフラメンコのポストカードを3枚リュックから取り出す。まずはイギリスの友達に一枚。そのあと画家さんに一枚。それからゆっくり高校にも一枚書く。ここから日本まで6日で着く。イギリスまでは4日で着く。そのことどこにいることやら。




丁寧に手紙を書いて、ポストオフィスで投函して、カフェに戻るとドゥルゲさんは待っていてくれた。




「終わったんか、よし行くかぁ、ダリの家に」





ダリの家はドゥルゲさん曰く1時間かかると言っていたが、10分で着く距離だった。途中、ドゥルゲさんは立ち止まっては、あんまり興味のない歴史の話を熱弁する。ドゥルゲさんを見ていると楽しかったけど、それ以上に疲れていた。





9時半過ぎについて、窓口に行く。10時50分からのツアーのチケットを買う。それまで何で時間をつぶすか。一人だったらダリの風景をスケッチなんてのも乙なものだけど、なにせこっちにゃドゥルゲがいる。



とりあえず腹が減ったのでオイリーなツナのサンドウィッチを食べる。ドゥルゲは2時から友達と車で隣町に遊びに行くと言う。だから10時半になったら、準備があるから帰らないといけないと行った。それを聞いて僕は、しばしの別れに自由を感じてしまった。













10時半になりドゥルゲは旅に出た。

そして僕は一人、ダリの家 見学ツアーに参加した。



家の中は、んーこれと言って、、、んーまーそうですね、、っていう感じだった。

僕はダリ好きだけど、ダリ愛好家ではないので、ダリとガラの寝室やらを見せて頂いても、WOW ダリの寝室!!!とまでは興奮しなかった。ただそうしてダリの家(別荘)を見ていると、「あーこんな家で画が描けたら、どんなにいいだろう」と思った。


(将来はあれやね、海が見える場所で大きな家建てて、大きなアトリエでグワングワン作品つくりたいね。そうやね。理想やね。そうやね。)







ダリの家を出て、すぐのところで「オハヨウゴザイマース」と上の方から声が聞こえる。上を見たらサングラスをした女の人がテラスからこっちに向かって言っている。内心どこのおばはんやねんと思って、よく見たら、あれ昨日バルで会ったニホンスキネーネーサンやんと思って、「昨日はどうも」と言う。ネーサンはイエーイって感じで何か言ってた。





とことこと歩いていると10分でカダケスの町に戻ってくる。




この町はキレイだ。こんなところで住んだら画も変わるやろうな。




そんなことを考えてながら、BAR "BROWN SUGER" に戻る。エリック・ドゥルゲに再会する。エリック・ドゥルゲの隣町への旅は中止になったそうだ。その時ふと今この町を出るタイミングだな、と思った。


1時、スケッチをしに海へ行く。



1時半、エリックドゥルゲにまたバルで出会う。



「3時のバスで ジローニ に行く。」僕がそういうと少し悲しそうな顔をして、「じゃあ、その前に昼飯でも食いに行こう。美味しいメシ屋があるんだ。」と言った。


すぐのところにあると思ったら、案外遠くて、歩いても歩いても、まだなの?って聞いてももう少しというばかり。途中で出会うご近所さんとドゥルゲはすぐに喋り出すから、早く行こうぜって僕は急かす。2時、あと1時間しかない。そのバスに乗り遅れたら今日はもうバスがない。ジローニ行きのバスは朝に1本、昼に1本しかない。




歩いて歩いてやっと着いたイタメシ屋さんは休業中だった。僕はまぁそんなところでしょうと思ってたので、じゃあ " BROWN SUGER " に戻ってサンドウィッチ食べよう。というコトになった。

それで "BROWN SUGER" に戻る道中、ドゥルゲがこの近くに俺の家がある。と言った。ちょっと見て行かない?と言う。







それでドゥルゲの後をついていくと、草の茂みに入る。それから岩を三つくらい登る。それから草むらをかき分けて行くとテントがあった。



「ここに10年住んでいるんだ。」



別にどこに住んでいようと気にしないので、別に驚きもしなかった。スゴい別荘に住んでいても、テントに住んでいても、そういう事なんだとしか思わなかった。

でもしみじみと10年そうやってこの人は生きてきたんだなぁ、

カダケスなんて僕はこの19年間、名前も知らなかった町の草むらで10年生きてきた人もいるんだなぁと思うと、世界は大きいなぁと感じた。









スペイン記 (9) エリック・ドゥルゲは笑う。  >>>


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