スペイン記 (7) ふらつきエリック、カダケスへの誘い


スペイン記 (7)     

-  ふらつきエリック、カダケスへの誘い  -








< ダリダリダリダリ!! >


ダリの故郷、フィゲラス。
ここには卵の屋根にコッペパンの壁で出来たダリの美術館がある。バロセロナ入国、マドリット出国以外、殆ど計画のない旅だけど、唯一このダリの旅だけはちゃんと事前に調べておいた。これから2、3日はダリを巡るダリダリダリな旅になる。まずはダリの故郷フィゲラス、それからダリの卵の家のあるカダケス、最後にダリと妻ガラのプボル城のあるフラガを尋ねる。


ダリ美術館に入るとダリ全集で見たことがある作品があちらにもこちらにもあって、奇妙な造形物がごちゃごちゃといて、なんだこれは!と美術館を2周も3周もした。マリリンモンロー?の唇の部屋とか、インク画の部屋とかダリデザインの心臓の形のジュエリーとか、何でもかんでもあって、ひたすら凝視していた。ダリの世界を目の前に勝つぞ!勝つぞ!と闘志が湧いてくる。またダリの作品の多様性を見ていると、僕にはもう少し好奇心が必要だとも感じた。







ダリ美術館のお土産売り場でダリのぷにゅぷにゅのクチビルの置物とペンとかを買う。それからフラメンコのおばさんが飛び出してるハガキを3枚買う。











< 罪のない罪、邪気のない邪気、イノセントチルドレン >


ダリ美術館を出てぶらぶらと歩いていると、おもちゃ博物館があったので、暇だったので入ってみる。玩具の歴史、リカちゃん人形的な人形の歴史、三輪車の歴史、ブリキの人形の歴史。ぼーっと見ていると急に不気味に見えてくる子供の玩具ならではのイノセンスな怖さがあった。
あやとりで遊ぶ家族となごんで、バス停へ。

"" パエリアが食べたい ""

バス停へ向かう道中におなかはそうおっしゃっていたのだけれど、バス停までの道のりにあいにくパエリアがいないので諦める。

バス停に着く。カダケス行きは一時間後。カダケスに着いたら夜7時くらい。ちょうどいい、カダケスに着いたらパエリアを食べよう。

パエリアを食べることは決まった。まだ泊まる場所は決まっていない。










<ふ

らつきエリック、カダケスへの誘い >






カダケスに着くまでの一時間半、熟睡。
ふらふらとバスから降りるとスグに目の前に広がる 白と青 に感動する。
白い壁と青い空、青い扉に青い窓枠、青い花瓶、屋根。
ずっと居たいなぁと考える。

町をふらふら歩きながらまずは宿探し。宿を探しているとバルがあったので、宿はまた後で見つければ良いかとバルに入る。


カウンターでおっさんの横に座ったら、おっさんが「何飲むんやぁ」言うて来たから「じゃあ、ビールで *」って言ったら「「エステリーリャ プレファボール? 」って言うんやでぇ」と教えられる。それで店主に

「へいますたー えすてりーりゃ ぷれふぁぼーるー」

と言う。店主が瓶を前に置いてくれる。それから横のおっさんと話出す。

(* スペインでは飲酒は18歳から。)






エリック・ドゥルゲ





おっさんの名前。ドラゴンが出てくる壮絶な冒険小説に出てきそうな名前。



エリック・ドゥルゲ、国籍はフランス、17年前からカダケスに住みつく。
60歳前後に見えるが実は50歳前後。
カダケスの歴史、スペイン・フランス間の歴史を話すのが好き。




エリック・ドゥルゲとうだうだと話していると8時半になって、そろそろ宿探しを再開するかぁと思ってドゥルゲとお別れをしようかと思うと、ドゥルゲに「海で寝ればいいじゃんかぁ、海はきれいだぞ」と言われて、それもそうだな、宿探しも面倒だし海に泊まればいいんだぁなぁと思って、今日の泊まる場所が決まる。二本目のビールの蓋があく。


泊まる場所も決まれば身も軽くなり、エリック・ドゥルゲと話は弾む。店を変えようぜっと言うので、ええでぇと言って、ビールを飲む。

BAR ” BROWN SUGER ”

スキンヘッドの気さくな店主に出迎えられ僕らはまたカウンターに座り、「エステリーリャ プレファボール?」と言う。ついでにサンドウィッチも注文する。
ベジタリアンなサンドウィッチはパンにキャベツとピクルス、ブルーチーズにアプリコットジャムにオリーブオイルがかかった何とも洒落たサンドウィッチだった。


パエリアを完全に食べ忘れて腹が減っていた僕は続けてアボカドとイエローチーズのサンドウィッチも注文する。




バルの中はバルらしく、皆よくお酒を飲む。
何をしているかもよく分からない人ばかり。
なぜ僕はココにいるのか、いよいよ分からなくなる。
僕はウトウトとし始める。



1時をまわる頃、僕らはまた、店を変える。次はあまり賑わっていないバルだった。そこでエリック・ドゥルゲに7本目のビールをおごってもらう。



エリック・ドゥルゲは僕に言う。
「明日はカダケスをガイドしてやろう!」

また怪しいこと言っとんぞ、このおっさん。
まぁ最悪なんかあっても、ただの酔っぱらいやし何とでもやれるやろうと思い、
「うん、よろしくー」と言う。

約束をしたところで、僕たちは何時にどこでなどと言う綿密な予定は立てない。この小さい町では携帯を待たなくても、どこかで出会う。どこかで見つかる、見つけられる。

ビールを飲み干して、また BAR ” BROWN SUGER ” に戻る。





2時になる頃、僕は店の真ん中にある赤いソファに沈んでいる。エリック・ドゥルゲはいない。横にはスペイン人の女の人が2人いて、「コンニーチワ」と話しかけられる。



「コンニーチワ、ニホンジンデスカ?」
「いえす、日本語しゃべれるんですか?」
「イイエ、チョットデスガ、日本に行ったことがあります。」
「ほんまですか。」
「ニホン、スキネー、イイネー」



そのあと、ニホンスキネーネーサンと喋ったあと、眠くなったので店を出る。







< カダケスの長い長い夜 >

さて、海で寝ましょうかいな。海で寝てみると、4月初旬の夜は寒い。
海で寝ろはないわ、ドゥルゲさん、あんた寒すぎるわ。
もっとこうロマンチックな感じで波の音でも聴きながら砂浜に大の字で、プライベートビーチを堪能してやろうと思ったのに。

まぁこうなるやろうとは思ってたので別に何とも思わず、眠りやすそうな場所を探す。普通に普通の宿に泊まるよりは面白いっしょ、ということです。

それでぶらぶらしていると観光案内所の横のベンチが寝やすそうだというコトで、緑青のベンチに横たわる。一応バッグを抱えて財布は後ろポケットに入れる。

起きる。腕時計を見る。3時過ぎ。
まだ一時間しか寝ていない。
バッグにうもれた僕は、時間の流れのヌラリ感に愕然とする。果てしなく長く感じる。

そこのベンチは海に続く道から吹く風が強いので場所移動をする。バルの方に戻るとバルはもう閉まってたので、また緑青のベンチに戻ってレッツトライアゲイン。
30分寝て震えて起きる。現在4時。
まだ外は真っ暗。


それから30分ふらついて海の周りの公園のスベリ台で眠ることにする。肩幅ギリギリまで、くっぽりとステンレスに包み込まれる。ステンレスの布団に包まって、よく寝た。

5時、5時半、6時、6時半、眠っては起きて眠っては起きてを繰り返していると、やっと空がうす灰色になっていく。

公園から見下ろす空と海は同じ色をしていた。
ダリの空を見た。
ダリの海を見た。

そんな気がした。






ダリの見た空をスケッチしよう。さむい。スケッチどころではない。
ダリの見た海をスケッチしよう。ねむい。スケッチどころではない。

7時から営業しているカフェが一つだけある。現在6時40分。地獄の20分。

2分間ラジオ体操をして、あと18分。
ぼーっと海を見て、あと15分。
出来るだけ場違いな邦楽を i pod で聴いて、あと9分。
公園を歩き回って、あと7分。
店の前でメニューを見て、4分。
また海を見て、2分。
またメニューを見て、1分。。。。


店が開く。一目散に入りたい気持ちはあるけど、店のおっさんに待ってたって思われるのが嫌ので、5分くらい公園を歩き回る。店が開いてしまうと高揚感からか、その5分間は今までの20倍くらいのスピードに感じられる。


店に入り、コーラとパンを食べる。
コーラを注文してすぐに、あったかいものを飲みたかったんだったと後悔する。

長い夜の終わりには、おだやかな朝が流れる。
少しずつ顔色を変える海と空を眺めながらゆっくりと朝は流れるんだ。
今日はまだ動き出さない。
コーラを飲みながら、ガラス窓から差し込む朝日と、暖房のあたたかさに "やすらぎ” を感じる。朝はゆっくりと流れるんだ。



朝はゆっくりと流れるんだ。



朝はゆっくりと流れるんだ。



朝はゆっくりと流れるはずだった。





白いテーブルの上には花瓶と灰皿、コーラの瓶とパンの皿がある。
僕の目の前には エリック・ドゥルゲ が座っている。



「おはよう、よく眠れたかい?」







コメント

  1. サンドウィッチの具材と味付けが、日本では
    あまりない感じで、洒落てて美味しそうなので
    真似して作ってみたいと思います。(K.Koga)
    ↑食いつく所がオカシイ

    返信削除
    返信
    1. 僕もやってみました。お洒落な気分でお洒落な朝にしたかったのですが、手はオリーブオイルまみれでアプリコットでベトベトなってしまいました。最終的にパンをかじって、チーズを口にいれて、アプリコット舐めて、オリーブオイルを飲んで、口の中で混ぜるっていう、お洒落からかけ離れた朝食になってしまいました。それでも口の中はカダケスでした。

      削除

コメントを投稿