スペイン記 (5) 3日目のグエル




スペイン記 (5)       - 3日目のグエル  -





朝8時に起きて服を洗って屋上で洗濯物を干して朝食。
食堂で同じ部屋のブラジル人とちょっと会話。
お互いだいたいノープラン。
ピーチジャムは期待していた以上に普通。

グエルへのバス停を探す。
杖をついたヨーダに「電車探してるんか?」というような旨のことをスペイン語で尋ねられる。ヨーダの両腕が機関車ゴトゴトのジェスチャーをしていたので多分そうだ。
「バスさがしてんねん。バスバスバス」僕はバスのジェスチャーをする。
ヨーダは「おお」と細い指を向こうの方へ向ける。
「おおきに」言うてヨーダと別れる。

ほんまに通じたんかいな、と思ってたけど、案外通じてたみたいですんなりとバス停に着く。そのバス停がグエル公園に行くバスが出る場所とは聞いていたけど、どの駅で降りるのかが分からない。
「グエル公園前」みたいなヒントも無いので、とりあえず「っぽい」ところで降りようと決める。




バス停からグエルへの  めっぷ


バス停の案内板に貼ってあった路線図とガイドブックのグエル周辺地図を照らし合わせる。その二つを合わせてみたところ、まずバスは道を直進して、どこかでやんわりと右に曲がる。また少し進んできゅっと行って、ぬらりと進む。このぬらりの道のどこかのタイミングで降りればグエルの近くみたい。

まぁ勘は良い方なので大丈夫でしょ。

まずバスは直進する。そしてやんわりと曲がり始める。おお曲がりだした曲がりだした。それからきゅっと行く。たぶん今のが「きゅっと」行く場所やってんやろなぁ。
そしてぬらりと進む。感覚的にはぬらりと進みだした。
というコトはもうすぐか、
かれこれ30分くらい乗っているかな。
ちょうど良いくらいかな。
降りてみる。
なんもない場所。しくったかな。
ちょっとぬらりが足りひんかったかな。

おっちゃんに「グエルどこ〜」って聞いたら「あああそこや」と指差す。
ジャストのバス停で降りることに成功した。
やっぱ勘だけは冴えてるなぁ。





< 3日目のグエル >




あとで気付くことになるが、僕はグエルの有名な入り口からではなく、裏側の「これがグエル?」という入り口から入っていったようだ。山道にサボテンが生えててメキシコの遺跡のような石で積まれた岡のようなものがある。その上に立ってバロセロナを一望する。バロセロナの中心にサグラダが空に浮かぶラピュタのようにいた。

これがグエル?

半信半疑の中、一時間、灼熱のスパニッシュ陽射しを浴びて大きな公園を彷徨う。
ガウディ美術館とか他の名物を見て回るのにさらに30分を要する。のび太の独り喋りが長過ぎて肝心のドラえもんが四次元ポケットから「ぶつ」を出す頃には、もう疲れ切っていた。


たぶん普通に行けば10分くらいで行ける道のりを寄そ道ばかりしていたから1時間半が経ち、やっとグエルの有名なグエルに行き着く。
おおおやっと出会えた。


グエル公園はアートとして以上に公園としての機能性、もしくは公園としてのパブリックな要素を重視しているように見えた。
まじまじどグエルのグエルを見て、どこかのTVで誰かが歩いてた場所を歩く。
なんとなく空想の中にいるような現実感の無さがあった。
僕が日本に生まれて19年間、大阪で画を描いてきた。それでグエルっていう響きは頭の片隅で「世界のどこかにある変な場所」として存在し続けてきた。僕が大阪でまったりしていた間にもグエルはそのグエルをグエグエしてて、僕は今やっと、そのグエグエに立っている。それは何となく不思議な気分と言うか、「お前は今までずっとそうやってグエグエしてきたんだな。」と言うために会いに行ったようだった。



グエルのベンチでフランスパン



グエルの有名なタイルのぐちゃぐちゃのベンチに座って昼飯を食べる。
昨日のかったかたのフランスパン1本と昨日のソーセージ8本。
ソーセージは常温保存で太陽の光を沢山浴びて光合成してないかと思いながら食べてみたが、まぁ大丈夫だった。
パンがなくなって、ソーセージは3本あまってしまう。
パンがないとソーセージは血の味、鉄の味しかしないので埋葬した。

グエルの動物達にお別れをして、駅まで歩く。
途中で土産物屋さんに入って、ベタなグエル土産をさがす。置物はどれも可愛くない。
店のおっさんが寄ってきて「コンニチワ」と言ってくる。
服屋の姉さんの「何かお探しでしょうか?」とか、レストランのおじさんの「ご注文はいかがになさいますか?」的な恐喝が怖くて、僕はあまり店に入れない人だけど、こういう”  いかにも” おじさんは結構好きなので、「おおコンニチワ」と無防備な日本人観光客っぽくなる。

「FCバロセロナ好キダロ?」
「なんのこと?」
「メッシ デエエナ」
「なんのこと?」
「ホーム用 アウェイ用 ドッチガイイ?」
「なんのこと?」
「ホーム用デ良イネ、サイズ ハ Mクライカナ?」

おっさんは条件反射的に 「日本人観光客=商売チャンス=メッシのユニフォーム」 の系図を頭の中で繰り広げる。僕が適当に返事をしていると奥の倉庫にユニフォームをとりにいく。バロセロナでメッシのホームユニフォームを着るベタすぎる日本人には なりたくない。なのでいくらだろうと買う気はない。おっさんは嬉しそうにユニフォームを持ってきて「特別やで、半額でええわ」と言う。なんでいきなり半額やねん。まだ「まけて」も何も言うてへんわ。まぁおっちゃんの期待感が顔中に溢れている表情が見れたので満足。適当に返事して店を出る。

グエルから一番近いメトロの駅に着く。
3時、これからサグラダファミリアの内部に侵入する。





< サグラダは成長期>




サグラダに再会する。
中に入ろうと思ったら、先日TVで紹介されたラーメン屋くらいの列が出来ている。並ばなアカンのか。一番後ろに並ぶ。列にうもれながら上を見上げて、巨大なサグラダを確認する。内部を想像する。チケットを買っていよいよ内部への侵入を遂行する。


中に入るとまず大聖堂の大きな空間が広がる。天空から差し込む光がやんわりと全体を包んでいる。柱はスパイダーマンの糸も届かないくらいに高く高く伸びている。ゆっくりとその中を回る。これがサグラダの内部か。僕がヨーロッパの教会を見るといつも感じるコトがある。それは神への執念の偉大さと意味の分からなさ。こんな壮大なものを創らせる要因への畏敬と理解できない気持ち。


サグラダの内蔵


サグラダのてっぺんへエレベーターに乗って行く。てっぺんの長細い窓からバロセロナを見下ろす。ずっとサグラダが見て来た風景を一緒に見る。
眼下には建築途中のサグラダの子供が伸びてきている。サグラダは今も成長期。
ずんずんと大きくなっている。僕が生まれる前からずっと。
やっぱ世界は広いなあ、改めて感じる。
まだこうやってサグラダだって伸び続けてるんだからな。


成長中のサグラダ

サグラダのてっぺん


サグラダのてっぺんから螺旋階段を下へ下へと降りて行く。途中で同じく一人旅で三つ上の日本人大学生と出会う。彼はずいぶん色々回ってきたようで日にこんがりとやけている。「どこ行きはったんですか?」と聞くと「ええっとねえ」と話しだす。

彼の旅は2週間、もう終盤にさしかかっている。1都市1日のハードスケジュールで寝る場所は夜行バスの中という日も少なくはない。セビーリャ、バレンシア、トレド、マドリッド、アレハンブラ、アブラムシ、セキセイインコ、キュウカンチョウとかなんとか言っていた。
「わいは旅のべてらんでっせ」感が鼻についたので、こてこての大阪人なんで大阪弁しか喋れまへんわっていう設定で、敬語の喋れない人になる。

「バル行った?」ふと聞かれて、まだ行ってないことを思い出す。
ああそういえばバル行ってないなぁ。
「行かなきゃだめだよぉ、僕なんていっぱい行ったよ。」
「ほんまでっかあ、友達とかできはったんでっか?」
「いや友達はなかなかバルでは難しいよねえ。とりあえずビール飲んだりして。」
「それ、おもろいんでっか?」
「いやおもろいというか、まぁ雰囲気を味わうと言うか。。。」
「まぁいづれ行きますわ〜」

なんで行かな ”ければいけない” んだろう。すこし窮屈を感じた。
なんでも旅行に行ったら絶対にしなきゃいけないコトみたいなのが多すぎる。
なぜかしないと損みたいな感じがある。
何でもそうだ。旅に関わらず、何でも損得みたいなのがあって、そういうのが窮屈にさせる。そんなの見なくたって、やらなくたって、気ままが楽しいのになぁ。




サグラダのスケッチをしてカルボナーラを食べる >



サグラダを出る。まだ日があったので、公園のベンチに座ってサグラダのスケッチをする。横に座ってたオッサンが良い感じのやさぐれ感を出して本を読んでたのでサグラダと一緒に描く。途中で俺の視線に気付いて、おっさんベンチを離れる。その後1時間くらいベンチで水彩絵の具のパレットを広げて画を描いた。何人かの市民が お手並み拝見 とばかりに覗いてくる。満足そうに帰る人もいえば、こんなもんか というような顔の人もいる。別に気にはならない。まじまじと見て来た人がいたので、ぱっと顔を上げて睨みつけてやったら、同じくらいの学生で「うひっ」って言って去って行った。

7時半、スケッチも終わり、今日は早くご飯食べて帰ろうと決める。

明日の予定は決まっている。
明日は朝6時に起きて朝の電車でダリの故郷フィゲラスへ行く。
そのために今日は早めに切り上げて10時くらいには寝よう。

サグラダの近くの店でカルボナーラを食べる。客は セリエ A の試合を見ている。僕も一緒になって見ていたら、あれ?っと思った。
「なんでリーガ・エスパニョーラじゃなくてセリエ A なんだ?ここはイタリアじゃない、スペインだ!」って。
そこではっと気付く。
「カルボナーラはイタリアン」





カルボナーラを食べてホステルに帰る。
ホステルに着いて、さぁ寝よう。
部屋の前で同じ部屋のブラジル人とばったり出会う。

「へーい、調子はどうだい?」
「良い感じだよ。そっちも元気?」
「グッドグッド!おお、今からナイトクラブに行くんだけど一緒に来ない!?」
「ナイトクラブ? 二人だけ?」
「他の奴らも、もうすぐ来るよ!」
「うーん、、、いいよ」
「よし決まりだな!今夜はバロセロナでナイトクラブだぁ!」


そしてバロセロナの長い夜が始まった。
















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コメント

  1. グエル公園は子供の頃に写真で見て、
    モザイクのカラフルさとファニーなデザインに
    「幼稚園みたい」と思った記憶があります。
    そして、そんな街に憧れたことも事実です。
    (K.Kogue)

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