2 ● 十 一 の終焉2時間前から 2 ○ + 2 の誕生2時間後までの記述


朝5時に目覚ましが鳴った。ピロルラピロルラとやかましいその音で、どうにかこうにかベッドから這い出した。シャワーを浴びて昨日の残りの煮物を食べる。服を着替えて戸締まりを2回くらい確認して寮を出た。ヒースロー空港に行くためにはだいたい電車で1時間は見ておいた方が良い。ピカデリーラインに乗り換えて約40分間 電車に揺られた。コノ線路を通って3ヶ月前にコノ街にやってきた。そして今、もと来た道を戻って日本に帰る。

9月18日、大阪発マレーシア・クアラルンプール経由ロンドン行き。
僕がこっちに来るときにのった飛行機。クアラルンプールにて7時間待機出来るというオプション付きのその飛行機を選んだ理由は、とにかくチケットが安かったことと片道切符だったことだった。” 片道切符 ” なんとなくその響きにくーっときてコレで行こうと決めた。何かやっぱ「人生は片道切符だぜっ」的なうさんくさいセンテンスに惹かれて、やっぱ旅はもう帰って来れないかもしれないって覚悟で行かなあかんのとちゃうんかって決めた。

十日前、色々用事が出来て、急遽日本に帰ることが決まった。チケットを急いで買って、大学の論文の課題を何とか終わらして、ようやく出発ギリギリに全ての準備が整った。3年くらい戻らんぞって気分でロンドンにやってきて3ヶ月で一次帰国。3ヶ月じゃあまぁそんなに誰かに会いたいとかないかと思ったけど、帰国が決まった瞬間から中学とか高校の友達の顔が脳裏ににょきにょき生えてきた。


アムステルダム発 大阪行き KL 0867 便  搭乗口。微妙になまった大阪弁のアナウンスが聞こえ、日本に帰るんだなと改めて実感した。機内に乗り組み窓側の席に座る。 日本人の老夫婦が僕の横に座った。しばらくすると老夫婦は雑誌を取り出し数読やクロスワードに没頭していた。僕はシートベルトを閉めて、ゆっくりと寝る体制に入った。ふと横に座っていた老夫婦のおばさんが僕におかきをくれた。しょうゆ味のそれを食べて、日本に帰るんだなあとまた実感した。




飛行機はずんずんと進んでいく。今日は 2011年12月30日。僕が日本に到着する頃には 12月31日になっている。ふとコノ一年で起きたコト全てが頭の中をぐるぐると旋回し始めた。




コノ一年を思い返して、まず一つ言えることは、とにかく長かった。よく楽しかった一年はすぐに過ぎるとかって言うけど、コノ一年は楽しかったけど5年分くらい生きた気がする。
この日記の2011年の記述をざっと見ただけで、あーあれもしたな、これも今年かって驚くぐらい、あれもこれもどれもそれも2011年におこった。

1月はじめはまだ留学用の英語の試験でびっくりするぐらい英語を勉強して、ひぃひぃ言ってて、その試験に受かって、高校を卒業。3月に2年間かけて作ったアニメーションを完成させる。そのくらいから油絵にトライし始めて、4月から9月まで高校や中学で美術のアークショップや美術部の顧問をして、同時期にバイトで15種くらい様々なバイトで死にかけながら仕事して一年分の寮費を稼いで、もう絶対働きたくないって思った。またその頃の3ヶ月間で線画を100枚描いて、8月には個展を開催した。旅では4月に自転車で九州を一周して、7月に岡山のハンセン病療養所を訪問した。9月の半ば、イギリスへ旅立って何やらかんやらよくわからないままに大学に飛び込んだ。ロンドンについて1週間で寮で変な人形つくってフラットメイト脅かして、2ヶ月目にポーランドの映画祭へ。3ヶ月経って今は大学一尖った奴になるために、いかに自分の世界観を表現してやろうかとガンガンしてる。

また同時に日本では震災が起こり、様々なことを考えさせられた。そのことをこの一年のまとめの一つの出来事として、ここで片付けて書くのはどうしても出来ないので書けない。



大阪に帰ってきて、家族と再会して風呂に入ってメシを食う。家に帰ってスグに長年しみつ
いた感覚を思い出す。僕は何も変わっていない。

ロンドンに渡って三ヶ月で僕は赤キノコでデッカくなったり、火のこがふけるようになったりしてる気分だった。襲いかかるものが楽しく思えて、ロンドンに来る前とは比べようもないくらい全て大きくなった気分だった。実際、関西空港に降り立ったときも何となく関西空港を出発したときより何かがみなぎっている気がしていた。

でも家で少しまったりと過ごしているうちに、自分は何も変わってないと気付いた。デッカくもなってないし火のこを口から吐いたりは出来ていない。ずっとちっちゃいままで何にも変わってないんだって気付いた。(むしろ体重は 4 ~ 5 kg 減ってて、ある意味、逆にもとよりちっちゃくなったのかもしれない。)




2012年はどんな一年にしたいかな。
2011年は新しい場所にどんどん突っ込んでいく一年だった。新しい生き物をどう乗りこなすか日々探求する一年だった。

ロンドンに来て三ヶ月が経った。最近、自分の今の最大値を知った気がする。こっちに来ても多くの友達や人々は僕の画を見て興味を持ってくれる。今は今の自分をすごい大勢の人に見てもらいたくて、いかに自分の世界観を発表する場所を作るかをよく考える。歩きながら、今度ここでこれしてみようとか考えるのはウキウキして楽しい。でも、それら全ては僕の現在の最大値の範囲内で行ってることで、自分にとって得意なゾーンで勝負しているような気がする。だからこれからは、見せるという活動と同時に新しい世界観の開拓をしていきたい。まぁ難しいことより美味しそうなニオイのする方へ尻尾を振っていくことが一番だと思うけど。

来年のテーマを一つ掲げるなら「暴走」。
今までの僕は冷静に目標を決めて、その為に努力してきた。計画的に爆発するコトを覚えてしまった気がする。だから今年は何も考えんと暴走したい。十代最後の年やし、まぁ何が何だかぐっちゃぐちゃでもええやろう。ちょっと追い込んでみようかな。

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