2月19日 東京




次の日になり、歩いてスカイツリーを目指した。 その日は何も
決めてなかった。ただ何となく高いもんが見える方を目指した。
最近、大阪・南森町にあるワタナベカメラという写真屋さんの方々と
知り合って、 その写真屋のおっちゃんにワイドのカメラを貸してもらって
「どっか撮ってこい」って言われてたので、カメラを首からつり下げて歩いた。
南千住のホテルから10~20分歩いたとこにあった
公園から見たスカイツリーが一番よく見えた。
ゴミが散乱した地面と何かを飲みながら下を見て地べたに座る老人、
数体の裸の銅像、
突如、にょきにょき生えだした鉄の塔なんて知ったこっちゃない雰囲気。
僕はそこでシャッターを押した。
スカイツリーの旅でカメラを手に持ったのは、その時だけだった。
近づけば近づくほど観光客のおばちゃん、おっちゃんの数は増えていく。
近づけば近づくほど600Mの高さが大きいのか小さいのかわからなくなる。
一通り見終わって、浅草の方へ歩き出した。
あんまスカイツリーとかヒトがイキってる感じがしてあんま好きやなかったけど、また完成を見に来ようと思った。
浅草、雷門の前は観光客や外国人のヒトでやがやいて息苦しかった。
浅草は初めて東京へ来た時、僕はまだ小学5年生で冬の寒い日だった。
東京という場所へ足を踏み入れて、ぐちゃぐちゃした路線図を見て浅草へ行った。
特に他に知ってる場所もなく、それに東京駅から簡単に行けたからだ。
東京に緊張して何か恐くて、一番最初に食べた昼食が浅草の吉野家だった。
せっかく東京きてんからもっと何かあるやろって感じやけど、
その時もそんなこと言いながら牛丼を食べた気がする。
その後、何回か訪れたけど、ここ何年かは行ってなかった。
僕は雷門をくぐって参拝の一連の動作をやってから、
花やしきの方へふらふらと足を進めた。
途中、大道芸のおっさんがワカメの揺れ方とコンブの揺れ方のまね
してるのを見たり、 面白そうながらくた屋さんに入ったり商店街の人々を
観察したりして浅草の独特のにおいを感じた。
東京へ来て一番カメラを撮りたいと思う雰囲気がそこにはあった。
整備された世界は便利できれいけど、
猥雑が漂う世界には人間がいる。
ぼったくりの手品みたいなのを売ってるおっちゃんも、
それを楽しそうに見てるお客も、 馬券場に群がる大勢のおっさんも
花やしきから見えるボロボロの小さな観覧車?も
それを取り巻く全てが混ざり合って創り出された味が皮膚にこびりつく。
いろいろ彷徨ってると、もと来た場所に戻ってきたので浅草を出た。
その後、渋谷のパルコの下の本屋へ行った。
良さんに教えてもらってた一度来てみたかった場所だ。
バスキアやキースの見たことない作品制作中の写真とか
ヘンリー・ダーガー全集とか山ほどある洋物の画集は
どれもこれもページを開きたくなって、気づくと結構な時間が経ってた。
悔しいことに、どれもこれも1万円以上するもんばっかで、
夜のバス代とか差し引いて残るお金では到底手を出せなかった。
いつか買いに来よって誓って、何か他に買えるものをと探してると
5千円くらいの海の生き物図鑑みたいなんがあって、絵の本じゃないけど
ウミウシとかイソギンチャクの色とか形に興味がそそられて買っちゃった。
400ページ近くある分厚い図鑑など旅中はなんて邪魔なんだって
渋谷のスクランブル交差点の信号を待ってるときに気づいた。
外は暗くなって、僕は11時20分発の夜行バスへ乗り込んだ。
横はおっさんでうわって思ったけど、一番後ろの席だったので
リクライニングが限界まで下げれてなかなか快適だった。

コメント